八王子市のギター教室「Music Studio Polku」の小俣です。
世界のさまざまなギタリストの経歴や演奏スタイル、代表曲などを紹介する「ギタリスト名鑑」。
紹介するのは、ポール・ギルバート(Paul Gilbert)です。

Racer XとMr. Bigでの活動、数多くのソロ作品、分かりやすいギターレッスンで知られるアメリカ出身のギタリストです。
正確なオルタネイトピッキングと弦飛びが注目されますが、ブルース、ポップス、クラシック、ハードロックを自然に行き来し、歌うようなメロディーも作ります。
この記事では、ポール・ギルバートの経歴、代表曲、主な奏法、使用ギターを、ギタリスト・講師の視点も交えながら紹介します。
まずはLIVE映像から
最初に観てほしいのが、「Scarified」のLIVE映像です。
高速なフレーズでも一音ずつ輪郭があり、右手の動きとアクセントが安定しています。難しい運指を並べるだけでなく、短いテーマ、リズムの変化、ユーモアを一つの演奏にまとめています。
ポール・ギルバートのプロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本名 | Paul Brandon Gilbert(ポール・ブランドン・ギルバート) |
| 生年月日 | 1966年11月6日 |
| 出身 | アメリカ・イリノイ州カーボンデール |
| 主なジャンル | ハードロック、ヘヴィメタル、インストゥルメンタルロック、ブルースなど |
| 主な活動 | Racer X、Mr. Big、ソロ、ギター講師 |
| 主な使用ギター | Ibanez PGM、Ibanez Fireman、Ibanez PGMM |
ギター、ヴォーカル、作曲を手がけ、教則映像やオンラインレッスンでも多くのギタリストへ影響を与えています。
速い演奏を細かく分解し、どのように練習するかを言葉で説明できる点も、ポールの大きな特徴です。
Racer Xと高速ピッキング
10代からギター雑誌へ演奏を送り、若くして高い技術を注目されました。その後、GIT(現在のMusicians Institute)で学び、講師も務めています。
1980年代半ばにRacer Xを結成し、『Street Lethal』『Second Heat』を発表。「Scarified」「Frenzy」「Technical Difficulties」などで、オルタネイトピッキング、弦飛び、ツインギターを前面へ出しました。
同時期の速弾きギタリストの中でも、拍の位置が明確で、フレーズをリズムとして聞かせる演奏が際立っています。
Mr. Bigと楽曲を支えるギター
1988年、エリック・マーティン、ビリー・シーン、パット・トーピーとMr. Bigを結成しました。
「Addicted to That Rush」ではベースとギターが複雑に絡み、「Green-Tinted Sixties Mind」ではタッピングによるイントロをポップな曲のフックにしています。
一方、「To Be with You」ではアコースティックギターとコーラスを中心にし、テクニックを控えて歌を支えています。
Mr. Bigでの演奏は、ポールが速弾きだけでなく、楽曲の役割に合わせて音数と音色を変えられるギタリストであることを示しました。
ソロ活動と現在まで
1990年代後半から本格的なソロ活動を開始し、歌ものとインストゥルメンタルの両方を制作しています。
『Get Out of My Yard』『Silence Followed by a Deafening Roar』『Fuzz Universe』では、技術的な演奏の中にも、ブルースやユーモア、覚えやすいメロディーを取り入れました。
Mr. Bigへの復帰後もソロ活動とレッスンを継続。近年は速さだけを競うのではなく、音程、リズム、歌心を重視した演奏を多く聞かせています。
ポール・ギルバートの演奏は何が特徴なのか
1.無駄の少ないオルタネイトピッキング
ダウンとアップを交互に使い、細かな音符でも一定のリズムを保ちます。
右手を大きく振り回さず、ピックが弦を通過する距離を小さくすることで、速さと音量をそろえています。
2.弦飛びを使った広い音程
隣の弦へ順番に移動するだけでなく、一弦以上を飛び越えて音域を変えます。
同じスケールでも広い跳躍が生まれ、ピアノやアルペジオのような響きになります。「Technical Difficulties」などで分かりやすく聞ける特徴です。
3.三音単位とアクセントの移動
三音の短いパターンを四分音符の拍に重ね、アクセントの位置を移動させます。
運指は繰り返しでも、聞こえるリズムが変化するため、長いフレーズに推進力が生まれます。
4.ピックスクラッチとノイズの音楽化
ピックを弦にこすりつける音や、ミュートした弦のアタックもフレーズへ取り入れます。
ノイズを完全に消すだけでなく、リズムと音程を管理して音楽的な効果へ変える発想です。
5.ブルースを土台にした歌うフレーズ
近年の演奏では、チョーキング、ヴィブラート、短いペンタトニックフレーズを重視しています。
速い部分との対比があるため、メロディーがより強く聞こえます。
使用ギターと音作り
ポールを象徴するのがIbanez PGMシリーズです。ボディーに描かれたFホール、シンプルなコントロール、演奏性の高いネックが特徴です。
その後は、Icemanの形を反転させた発想から生まれたFiremanも中心に使用しています。モデルによってハムバッカーやミニハムバッカーなどを搭載し、太さとピッキングの輪郭を両立させています。
音作りでは、歪ませすぎず、速いフレーズの各音とピックスクラッチが聞こえる中音域を大切にしています。
まず聴きたい代表曲・演奏動画
Technical Difficulties
弦飛び、オルタネイトピッキング、アクセント移動をまとめた代表曲です。最初は速さではなく、短いパターンごとの着地点を聞いてみてください。
Addicted to That Rush
Mr. Bigの初期を代表する曲です。ギターとベースが同時に細かなリフを作り、バンド全体を前へ進めています。
Fuzz Universe
ヘヴィなリフと明快なメロディーを組み合わせたソロ代表曲です。速い部分だけでなく、テーマへ戻るタイミングに注目してください。
代表的なアルバム
- 『Street Lethal』(Racer X/1986年)
- 『Second Heat』(Racer X/1987年)
- 『Mr. Big』(Mr. Big/1989年)
- 『Lean into It』(Mr. Big/1991年)
- 『King of Clubs』(1998年)
- 『Get Out of My Yard』(2006年)
- 『Silence Followed by a Deafening Roar』(2008年)
- 『Fuzz Universe』(2010年)
- 『Behold Electric Guitar』(2019年)
- 『Werewolves of Portland』(2021年)
ギター講師として感じる、ポールから学べること
ポールの演奏から学べるのは、難しいフレーズを小さく分ける方法です。
速弾きで崩れる原因は、単純な指の速さだけではありません。ピッキングの向き、弦を移動する位置、アクセント、最後の音の着地を一つずつ確認すると、問題点が見つかりやすくなります。
また、ゆっくり弾くときも本番と同じピッキング方向を使うことが大切です。
練習へ取り入れるなら
- 一弦につき三音のパターンを小さな動きで弾く
- 三音のまとまりを連続させ、アクセント位置を移動する
- 一弦を飛ばすアルペジオをゆっくり練習する
- 弦移動の直前と直後だけを二音で繰り返す
- ペンタトニックの短いフレーズと速弾きを交互に置く
- 録音し、最初と最後の音が拍へ合っているか確認する
まとめ
ポール・ギルバートは、正確なピッキングと弦飛びを、リズムとメロディーへ結びつけるギタリストです。
Racer Xの高速演奏、Mr. Bigの楽曲を支えるギター、ソロでのブルースやユーモアまで、幅広い表現を持っています。
まずは「Scarified」でピッキング、「Addicted to That Rush」でバンドとのかみ合わせ、「Fuzz Universe」で現在につながる作曲を聴いてみてください。
主な参考資料
※プロフィールおよびリンクは2026年9月10日時点で確認しています。
DAIJI OMATA

ギタリスト、音楽プロデューサー。
13歳でギターをはじめ、作詞作曲編曲を開始。
以後、バンド活動を経て、ギタリスト、音楽プロデューサー、作編曲家などの現役プロミュージシャンとして活動中。
東京都八王子市みなみ野にて、音楽教室を運営。
めじろ台・相原・片倉・北野・城山・鑓水・高尾・西八王子・橋本・相模原から通いやすい個人レッスンの教室です。


