八王子みなみ野のギター教室「Music Studio Polku」の小俣です。
世界のさまざまなギタリストの経歴や演奏スタイル、代表曲などを紹介する「ギタリスト名鑑」。
第3回は、コリー・ウォン(Cory Wong)です。

歯切れのよいカッティングと、明るく透明感のあるクリーントーンで知られる現代のファンクギタリストです。VulfpeckやThe Fearless Flyersでの活動に加え、自身のバンドを率いるソロアーティスト、作曲家、アレンジャー、プロデューサーとしても幅広く活動しています。
派手な速弾きで前へ出るというより、リズムと音の隙間を精密に組み立て、ギターをバンド全体の推進力へ変えるプレイヤーです。
この記事では、コリー・ウォンの出身や経歴、代表曲、主な奏法、使用ギターを、ギタリスト・講師の視点も交えながら紹介します。
コリー・ウォンのプロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本名 | Cory Juen Wong(コリー・ジュエン・ウォン) |
| 生年月日 | 1985年3月8日 |
| 出身 | アメリカ・ニューヨーク州ポキプシー生まれ/ミネソタ州ミネアポリス育ち |
| 主なジャンル | ファンク、ジャズ、R&B、ソウル、ポップなど |
| 主な活動 | ソロ、Vulfpeck、The Fearless Flyers、作曲、編曲、プロデュースなど |
| 主な使用ギター | Fender Cory Wong Stratocaster、Fender Highway One Stratocasterなど |
コリー・ウォンは、ギタリストとしての演奏力だけでなく、バンド全体を見渡すアレンジ力やプロデュース能力にも優れたミュージシャンです。
2020年にジョン・バティステと発表したアルバム『Meditations』は、2021年のグラミー賞「Best New Age Album」にノミネートされました。
ベースからギターへ――ミネアポリスで培った音楽性
コリーはニューヨーク州ポキプシーで生まれ、ミネアポリスで育ちました。幼い頃からピアノを学び、Red Hot Chili PeppersやPrimusに影響を受けて、当初はベースに関心を持ちます。その後ギターも始め、学生時代にはパンクバンドなどで演奏しました。
大学や音楽学校で学びながら、ミネアポリス周辺のジャズクラブやセッションへ参加。ジャズを土台に演奏経験を積み、やがてファンク、R&B、ソウルへと活動の幅を広げていきます。
特に、Princeのバンドに関わったミュージシャンたちも参加していたDr. Mambo’s Comboでの経験は、アンサンブルの中でリズムを支える感覚を磨く大きな機会となりました。
Vulfpeckとの出会い
2013年頃、コリーはVulfpeckのメンバーと出会い、セッションを行います。その演奏をもとに作られた楽曲が、彼の名前をそのままタイトルにした「Cory Wong」です。
同曲は2016年のアルバム『The Beautiful Game』に収録され、その後コリーはVulfpeckのレコーディングやツアーへ継続的に参加するようになりました。
Vulfpeckの演奏は、各楽器の音数が多すぎず、それぞれの短いフレーズが組み合わさることでグルーヴを作ります。その中でコリーのギターは、細かな16分音符と鋭いアクセントによって、ドラムとベースの間をつなぐ役割を担っています。
The Fearless Flyersとソロ活動
コリーは、ギターのマーク・レッティエリ、ベースのジョー・ダート、ドラムのネイト・スミスとともに、インストゥルメンタル・ファンクバンドThe Fearless Flyersでも活動しています。
最小限の編成でありながら、各楽器のリズムが緻密に噛み合う演奏が特徴です。コリーのカッティングは、コード伴奏というより、短い音を組み合わせた打楽器のように機能しています。
ソロ活動では、ホーンセクションを含む大編成のバンドを率い、ファンクを中心にジャズ、ポップ、ロック、フォークなどを取り入れた作品を発表。Dave Koz、Dirty Loops、Victor Wooten、Béla Fleck、Cody Fryなど、さまざまなミュージシャンとの共同制作も行っています。
2026年にはアルバム『Lost in the Wonder』を発表し、ギタリストだけでなく、作曲家、アレンジャー、プロデューサーとしての側面をさらに前面へ出しています。
コリー・ウォンの演奏は何が特徴なのか
コリーの演奏を聴くと、右手の高速なカッティングが最初に耳へ入ります。しかし、本当に重要なのは速さではなく、鳴らす音と鳴らさない音を細かく選び、一定のリズムの中へ配置するコントロールです。
1.16分音符を保つ右手の動き
右手を振り子のように動かし、16分音符の細かな流れを身体の中に保ちながら演奏します。
実際に弦を鳴らす回数が少ないフレーズでも、右手の動きが止まらないため、音の位置が安定します。速く腕を振ることよりも、上下のストロークを均等に保ち、必要な場所だけにアクセントを置くことが大切です。
2.左手のミュートとゴーストノート
コリーのカッティングでは、コードの音だけでなく、ミュートされた弦の乾いた音もリズムの一部です。
左手で弦へ軽く触れ、音程のないブラッシング音を作りながら、必要な瞬間だけコードを鳴らします。右手の速さ以上に、左手で音の長さを切るタイミングが演奏の歯切れを決めています。
3.小さなコードと転回形
6本すべての弦を使った大きなコードではなく、高音側の2〜4本を使った小さなコードフォームを多用します。
トライアドの転回形、7th、9th、susコードなどを使い、ベースやキーボードと音域がぶつからないように配置します。同じコード進行でも、ボイシングを少し変えることで、メロディーのような動きを伴奏の中に作っています。
4.アクセントと強弱
すべてのストロークを同じ音量で鳴らすのではなく、強く出す音、軽く触れる音、完全に休む場所を細かく使い分けます。
この強弱によって、同じ16分音符でも機械的にならず、前後へ揺れるようなグルーヴが生まれます。コリーらしさは、音符の数よりもアクセントの置き方に表れています。
5.バンド全体の隙間を埋めすぎないアレンジ
コリーは、ギターだけを目立たせるのではなく、ベース、ドラム、キーボード、ホーン、ヴォーカルとの関係を考えてフレーズを作ります。
一つのパートだけで聴くと単純でも、他の楽器と重なると強いフックになるように設計されています。弾ける音をすべて入れるのではなく、曲に必要な役割を選ぶ姿勢が、彼のリズムギターの大きな特徴です。
6.クリーントーンを生かしたリードプレイ
リズムギターの印象が強い一方、リードではペンタトニック、コードトーン、オクターブ、音域の広い跳躍などを使い、明るく抜けるフレーズを演奏します。
深い歪みで音をつなぐのではなく、ピッキングと左手のタイミングをそろえ、一音ずつ輪郭を出す演奏です。カッティングと同じく、発音の正確さと強弱が重要になります。
使用ギターとクリーントーン
コリーを象徴するギターは、サファイアブルーのFender Stratocasterです。
長年愛用してきたHighway One Stratocasterをもとに、2021年にはFenderからシグネチャーモデル「Cory Wong Stratocaster」が発売されました。
一般的なStratocasterよりわずかに小さなアルダーボディーに、Seymour Duncan Cory Wong Clean Machineピックアップを搭載。トーンノブのプッシュ/プッシュスイッチを押すと、5ウェイスイッチの位置に関係なく、コリーが多用するネックとミドルのミックス音へ切り替えられます。
このハーフトーンは、低音が膨らみすぎず、高音に独特の鋭さがあるため、細かなカッティングでも各ストロークの輪郭が残ります。
音作りは、クリーンから軽いクランチを基本に、コンプレッサー、EQ、控えめなオーバードライブなどを使用します。歪みを増やして迫力を作るより、ピッキングの強弱とコードの分離が分かる音を保つことが重要です。
シグネチャーモデルには、トレモロスプリングの共振を抑えるためのヘアタイも付属しています。必要のない響きまで細かく整理する発想に、コリーの音作りへの考え方が表れています。
まず聴きたい代表曲・演奏動画
Cory Wong/Vulfpeck
コリーの名前がそのまま曲名になった、Vulfpeckの代表曲の一つです。
細かなブラッシング、短いコード、アクセントを組み合わせ、ギターがリズムセクションの一部として機能しています。まずは音程よりも、右手の動きと音を切る位置に注目してみてください。
Lunchtime
ホーンを含むバンド全体のアレンジと、コリーのリズムギターを同時に楽しめる楽曲です。
同じパターンを繰り返すだけではなく、曲の展開に合わせてコードの位置やアクセントを変え、演奏の熱量を上げていきます。
Ace of Aces/The Fearless Flyers
ギター2本、ベース、ドラムという小さな編成で、各パートが緻密に組み合わされたインストゥルメンタルです。
コリーのギターだけを追うのではなく、ネイト・スミスのドラムやジョー・ダートのベースと、アクセントがどの位置で重なるかを聴くと面白さがよく分かります。
代表的なアルバム
- 『The Optimist』(2018年)
- 『Motivational Music for the Syncopated Soul』(2019年)
- 『Elevator Music for an Elevated Mood』(2020年)
- 『Meditations』(with Jon Batiste/2020年)
- 『The Striped Album』(2020年)
- 『Turbo』(with Dirty Loops/2021年)
- 『Power Station』(2022年)
- 『The Lucky One』(2023年)
- 『Starship Syncopation』(2024年)
- 『Lost in the Wonder』(2026年)
最初の一枚としては、コリーらしいカッティングと大編成のアレンジを楽しめる『Motivational Music for the Syncopated Soul』がおすすめです。
Vulfpeckでの演奏を聴く場合は「Cory Wong」、The Fearless Flyersでは「Ace of Aces」から入ると、それぞれのバンドでの役割の違いも分かりやすいと思います。
ギター講師として感じる、コリーから学べること
コリーの演奏から学べるのは、速いカッティングの方法だけではありません。最も参考になるのは、自分のパートをバンド全体の中で考える姿勢です。
ギターだけで演奏すると、ついコードを長く鳴らしたり、空いている場所へ音を足したりしたくなります。しかし、ファンクでは短く切った一音や、何も弾かない休符がグルーヴを作ることがあります。
また、同じコードでも、低音を省き、高音側の小さなフォームへ置き換えるだけで、ベースやキーボードと共存しやすくなります。難しいコードを増やす前に、現在鳴らしている音が本当にすべて必要なのかを考えることが大切です。
コリーの演奏は、「何を弾けるか」だけでなく、「どの音を選び、どこで止めるか」がギタリストの個性になることを教えてくれます。
練習へ取り入れるなら
最初から速いテンポでコードを切り替える必要はありません。まずは左手ですべての弦を軽くミュートし、音程のないブラッシングだけで16分音符を刻む練習がおすすめです。
- メトロノームを遅めに設定し、右手を一定に上下させる
- 左手で弦をミュートし、すべてのストロークの音量をそろえる
- 一部のストロークだけ強くして、アクセントを移動させる
- 高音側3本程度の小さなコードを一か所だけ鳴らす
- 鳴らした直後に左手の力を抜き、音を短く切る
- 録音して、リズムの揺れや不要な開放弦を確認する
右手の速さよりも、左手で音を止めるタイミングと、アクセントの位置がそろっているかを優先します。
慣れてきたらドラム音源に合わせ、キックやスネアと同じ位置、またはその隙間へアクセントを置いてみると、伴奏としての役割を体感しやすくなります。
まとめ
コリー・ウォンは、精密な16分音符のカッティングと、透明感のあるクリーントーンを現代のファンクギターの象徴へ押し上げたギタリストです。
その魅力は右手の速さだけではありません。左手のミュート、小さなコードフォーム、細かな強弱、そして他の楽器を生かすアレンジによって、短い一音から大きなグルーヴを作っています。
まずはVulfpeckの「Cory Wong」でカッティングの基本を聴き、「Lunchtime」やThe Fearless Flyersの「Ace of Aces」で、バンド全体の中にギターがどのように配置されているかにも注目してみてください。
主な参考資料
- Cory Wong公式サイト
- Fender「Cory Wong Stratocaster」
- Recording Academy「Cory Wong」
- Cory Wong公式Bandcamp「Lost in the Wonder」
- Neural DSP「Archetype: Cory Wong X」
※プロフィールおよびリンクは2026年9月1日時点で確認しています。
DAIJI OMATA

ギタリスト、音楽プロデューサー。
13歳でギターをはじめ、作詞作曲編曲を開始。
以後、バンド活動を経て、ギタリスト、音楽プロデューサー、作編曲家などの現役プロミュージシャンとして活動中。
東京都八王子市みなみ野にて、音楽教室を運営。
めじろ台・相原・片倉・北野・城山・鑓水・高尾・西八王子・橋本・相模原から通いやすい個人レッスンの教室です。


