八王子市のギター教室「Music Studio Polku」の小俣です。
世界のさまざまなギタリストの経歴や演奏スタイル、代表曲などを紹介する「ギタリスト名鑑」。
第2回は、エディ・ヴァン・ヘイレン(Eddie Van Halen/エドワード・ヴァン・ヘイレン)です。

ライトハンド奏法をロックギターの象徴的なテクニックへ押し上げた存在として知られていますが、魅力は速弾きだけではありません。豪快なリフ、跳ねるようなリズム、ハーモニクスやアームを使った音色変化、そして自ら楽器を改造する発想まで含め、エレキギターの可能性を大きく広げたギタリストです。
この記事では、エディ・ヴァン・ヘイレンの出身や経歴、代表曲、主な奏法、使用ギターを、ギタリスト・講師の視点も交えながら紹介します。
エディ・ヴァン・ヘイレンのプロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本名 | Edward Lodewijk Van Halen(エドワード・ローデウェイク・ヴァン・ヘイレン) |
| 生年月日 | 1955年1月26日 |
| 没年月日 | 2020年10月6日(65歳) |
| 出身 | オランダ・アムステルダム生まれ/アメリカ・カリフォルニア州パサデナ育ち |
| 主なジャンル | ハードロック、ヘヴィメタル、ポップ・ロックなど |
| 主な活動 | Van Halen、作曲、プロデュース、ゲスト演奏など |
| 主な使用ギター | Frankenstein、Kramer 5150、Music Man EVH、Peavey Wolfgang、EVH Wolfgangなど |
エディは、兄のアレックス・ヴァン・ヘイレンとともにロックバンド「Van Halen」を結成したギタリストです。ギターだけでなく、作曲、キーボード、コーラス、プロデュースも担当し、バンドのサウンドを中心で支えました。
Van Halenは2007年にロックの殿堂入り。1992年にはアルバム『For Unlawful Carnal Knowledge』でグラミー賞を受賞しています。
オランダからアメリカへ――音楽一家で育った少年時代
エディは1955年、オランダのアムステルダムに生まれました。父のヤン・ヴァン・ヘイレンは、ピアノやクラリネット、サックスを演奏する音楽家でした。
1962年、家族でアメリカへ移住し、カリフォルニア州パサデナで暮らし始めます。エディと兄のアレックスは幼い頃からピアノを学び、その後、エディはドラム、アレックスはギターを演奏していましたが、やがて担当楽器を入れ替えます。
エディはエリック・クラプトンをはじめとするブルースロックのギタリストから強い影響を受け、演奏を耳で覚えながら技術を磨いていきました。
Van Halenの結成と衝撃のデビュー
1970年代前半、兄のアレックスらと活動していたバンドは、デイヴィッド・リー・ロスとマイケル・アンソニーを迎え、Van Halenとしてロサンゼルス周辺のクラブで人気を高めていきます。
1978年、デビューアルバム『Van Halen』を発表。「Runnin’ with the Devil」「Ain’t Talkin’ ’bout Love」「You Really Got Me」などに加え、短いギターインストゥルメンタル「Eruption」が収録されました。
「Eruption」で披露された両手を指板上で使うタッピングは、世界中のギタリストに大きな衝撃を与えました。エディがこの奏法そのものを発明したわけではありませんが、ハードロックの中で強烈な音楽表現として成立させ、広く浸透させた功績は非常に大きいといえます。
『1984』と世界的な成功
1984年には「Jump」「Panama」「Hot for Teacher」を収録したアルバム『1984』を発表。「Jump」ではギターだけでなく、エディ自身が演奏するシンセサイザーの印象的なリフも大きな役割を果たしています。
デイヴィッド・リー・ロス脱退後は、サミー・ヘイガーをヴォーカルに迎え、『5150』『OU812』『For Unlawful Carnal Knowledge』『Balance』などを発表しました。ポップなメロディーやキーボードを取り入れながらも、エディらしいギターサウンドは一貫してバンドの中心にあります。
また、1982年にはマイケル・ジャクソンの「Beat It」に参加。短いゲスト演奏ながら、楽曲の緊張感を一気に高めるギターソロを残しました。
エディ・ヴァン・ヘイレンの演奏は何が特徴なのか
エディの演奏は、タッピングや速弾きに注目が集まりがちです。しかし実際には、リズム、音色、ノイズ、ハーモニクスを含め、ギターから出るあらゆる音を音楽として組み立てているところに大きな特徴があります。
1.ライトハンド奏法(タッピング)
左手のハンマリングやプリングに右手のタッピングを組み合わせ、音域の広いアルペジオや高速フレーズを滑らかに演奏します。
エディのタッピングは、単に速く弾くための技術ではありません。「Eruption」では、同じ形を移動させながら和音感を作り、クラシック音楽のような流れをギター一本で表現しています。
2.ハーモニクスを使った立体的な音作り
ナチュラル・ハーモニクス、ピッキング・ハーモニクス、タッピング・ハーモニクスを組み合わせ、通常の押弦とは異なる高くきらびやかな音を効果的に使います。
ハーモニクスにアーム操作を加え、音程を大きく揺らす表現もエディを象徴するサウンドの一つです。
3.大胆なアーミングと効果音
アームによる急激な音程下降や上昇、モーター音のような効果、フィードバックやノイズを利用した表現など、ギターを楽器と効果音装置の両方として扱います。
派手な音でありながら、曲の始まりや展開の切り替わりに配置されているため、単なる見せ技ではなくアレンジの一部として機能しています。
4.滑らかなレガートと開放弦の活用
ハンマリング、プリング、スライドを多用し、ピッキングだけでは得にくい滑らかなフレーズを作ります。そこへ開放弦を混ぜることで、押さえている音と開放弦が不規則に交差し、独特のスピード感と響きが生まれます。
5.コードと単音を行き来するリズムギター
エディの演奏で特に注目したいのが、バッキングの巧さです。
低音のリフ、コードの一部、ブラッシング、ハーモニクス、短いオブリガートを細かく切り替え、ギター一本でリズムと装飾を同時に作ります。「Panama」や「I’m the One」を聴くと、音数の多さよりも、ドラムと噛み合う跳ねたリズムが演奏の核になっていることが分かります。
6.テクニックを明るく聴かせるフレーズ感
高度な演奏であっても、エディのフレーズには歌いやすさ、ユーモア、勢いがあります。正確さだけを前面に出すのではなく、少し前のめりになるタイミングや大胆なアクセントによって、演奏に人間らしい躍動感を与えています。
使用ギターと「ブラウンサウンド」
エディを象徴するギターが、赤・白・黒のストライプで知られる「Frankenstein」です。
既製品に理想の仕様がなかったため、ストラトキャスター型のボディーとネックを入手し、ブリッジ側にハムバッカーを搭載。フェンダー系ギターの弾きやすさやトレモロと、ギブソン系ギターの太いサウンドを組み合わせる発想から作られました。
その後もKramer 5150、Music Man EVH、Peavey Wolfgang、EVH Wolfgangなど、時代に合わせて自らの理想を反映したギターを使用しています。アンプについても、初期のMarshall Super Leadから、Peavey 5150、EVH 5150IIIへと発展していきました。
エディのギターサウンドは、一般に「ブラウンサウンド」と呼ばれます。強く歪んでいながら音の輪郭が潰れず、太さ、乾いたアタック、豊かな倍音を併せ持つ音です。
ただし、機材だけで同じ音になるわけではありません。右手の強弱、ミュート、ピックを当てる位置、左手のレガート、コードを切るタイミングまで含めて、あの立体的なサウンドが作られています。
まず聴きたい代表曲・演奏動画
Eruption
1978年のデビューアルバム『Van Halen』に収録された、エディを象徴するギターインストゥルメンタルです。
タッピングだけでなく、速いピッキング、レガート、ハーモニクス、アーミング、クラシカルな和音感が短い演奏の中に凝縮されています。
Panama
アルバム『1984』を代表する一曲です。
重い音でありながらリズムには軽快な跳ねがあり、コード、単音リフ、ブラッシングが自然に組み合わされています。ソロだけでなく、歌の後ろでギターがどのように動いているかにも注目したい楽曲です。
Hot for Teacher
アレックスの印象的なドラムイントロに続き、エディの高速フレーズとシャッフル感のあるリフが飛び込んできます。
テクニカルでありながら、バンド全体の強烈なグルーヴが失われていないところに、Van Halenらしさがよく表れています。
代表的なアルバム
- 『Van Halen』(1978年)
- 『Van Halen II』(1979年)
- 『Women and Children First』(1980年)
- 『Fair Warning』(1981年)
- 『1984』(1984年)
- 『5150』(1986年)
- 『For Unlawful Carnal Knowledge』(1991年)
- 『A Different Kind of Truth』(2012年)
最初の一枚としては、「Eruption」「Ain’t Talkin’ ’bout Love」「You Really Got Me」などを収録したデビュー作『Van Halen』がおすすめです。
楽曲の親しみやすさとギターの格好良さを同時に楽しみたい場合は、「Jump」「Panama」「Hot for Teacher」を収録した『1984』も入りやすいと思います。
ギター講師として感じる、エディから学べること
エディを練習の題材にすると、どうしてもタッピングや速弾きから始めたくなります。しかし、演奏の本質へ近づくには、まずリズムギターを聴くのがおすすめです。
同じリフを弾いても、休符の長さ、ミュートの深さ、アクセントの位置が少し変わるだけで、エディらしい躍動感は失われます。難しい音を増やす前に、シンプルなコードや単音リフをドラムに合わせ、身体で拍を感じながら弾くことが大切です。
また、既製品をそのまま使うのではなく、自分の演奏に必要な音や機能を考え、楽器やアンプを改良し続けた姿勢も大きな特徴です。機材を増やすことよりも、「自分はどのような音を出したいのか」を先に考える。その発想は、現在のギタリストにもそのまま通じます。
練習へ取り入れるなら
いきなり「Eruption」を原曲どおりに弾く必要はありません。まずは「Panama」や「Ain’t Talkin’ ’bout Love」の短いリフから始めると、エディらしいリズムと音の切り方を体験できます。
- 音程より先に、リフのリズムを声で歌う
- 歪みを少し抑え、不要な弦のノイズを確認する
- コードを押さえ続けず、休符の位置でしっかり音を止める
- メトロノームやドラム音源に合わせ、跳ね方をそろえる
- 最後にハーモニクス、スライド、アームなどの表現を加える
タッピングを練習する場合も、速さより左右の手の音量をそろえることが先です。一音ずつ均等に聞こえるテンポから始めると、フレーズが音楽としてつながりやすくなります。
まとめ
エディ・ヴァン・ヘイレンは、ライトハンド奏法をはじめとする革新的なテクニックによって、ロックギターの表現を大きく変えたギタリストです。
しかし、その魅力は派手なソロだけではありません。強烈なリフ、跳ねるリズム、歌心のあるフレーズ、音色への探究心、そして楽器そのものを作り変える発想が一つになり、エディにしか出せないサウンドが生まれています。
まずは「Eruption」で革新的なソロを聴き、「Panama」や「Hot for Teacher」でリズムギターにも注目してみてください。ソロと伴奏の両方に耳を向けると、エディ・ヴァン・ヘイレンというギタリストの本当の大きさが見えてきます。
主な参考資料
- Van Halen公式サイト
- Rock & Roll Hall of Fame「Van Halen」
- EVH Gear「Frankenstein」
- Smithsonian National Museum of American History「Van Halen Frankenstein Electric Guitar」
- Recording Academy「Van Halen」
- RIAA Gold & Platinum「Van Halen」
※プロフィールおよびリンクは2026年9月1日時点で確認しています。
DAIJI OMATA

ギタリスト、音楽プロデューサー。
13歳でギターをはじめ、作詞作曲編曲を開始。
以後、バンド活動を経て、ギタリスト、音楽プロデューサー、作編曲家などの現役プロミュージシャンとして活動中。
東京都八王子市みなみ野にて、音楽教室を運営。
めじろ台・相原・片倉・北野・城山・鑓水・高尾・西八王子・橋本・相模原から通いやすい個人レッスンの教室です。


