八王子市のギター教室「Music Studio Polku」の小俣です。

世界のさまざまなギタリストの経歴や演奏スタイル、代表曲などを紹介する「ギタリスト名鑑」。
紹介するのは、ヌーノ・ベッテンコート(Nuno Bettencourt)です。
Extremeのギタリストとして知られ、ハードロックの力強さ、ファンクの細かなリズム、歌うようなメロディーを一つの演奏にまとめるプレイヤーです。
高速なソロに注目が集まりやすい一方、右手の鋭いリズム、立体的なコード、楽曲の展開に沿ったフレーズ構成まで含めて、非常に完成度の高い演奏を聴かせます。
この記事では、ヌーノ・ベッテンコートの経歴、代表曲、主な奏法、使用ギターを、ギタリスト・講師の視点も交えながら紹介します。
まずはLIVE映像から
最初に観てほしいのが、2009年にボストンで収録された「Decadence Dance」のLIVE映像です。
重いリフを弾きながら、細かな16分音符、休符、コードのアクセントを使い分けています。ソロだけでなく、ヴォーカルを支えるリズムギターやステージ上でのバンドとの掛け合いまで含めて、ヌーノの魅力が伝わる演奏です。
ヌーノ・ベッテンコートのプロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本名 | Nuno Duarte Gil Mendes Bettencourt(ヌーノ・ドゥアルテ・ジル・メンデス・ベッテンコート) |
| 生年月日 | 1966年9月20日 |
| 出身 | ポルトガル領アゾレス諸島テルセイラ島生まれ/アメリカ・マサチューセッツ州育ち |
| 主なジャンル | ハードロック、ファンクメタル、ポップ、オルタナティヴロックなど |
| 主な活動 | Extreme、ソロ、Mourning Widows、Population 1、DramaGods、Rihannaのツアーなど |
| 主な使用ギター | Nuno Guitars Dark Horse/N4、Washburn N4など |
ヌーノ・ベッテンコートは、ギターだけでなく、ヴォーカル、作詞・作曲、編曲、プロデュースも手がけるミュージシャンです。
Extremeの作品では多くの楽曲制作とアレンジを担い、技巧的なギタリストであると同時に、バンド全体のサウンドを組み立てる役割も果たしています。
アゾレス諸島からマサチューセッツへ
ヌーノは、ポルトガル領アゾレス諸島のテルセイラ島で生まれ、4歳の頃に家族とともにアメリカ・マサチューセッツ州へ移りました。
音楽に親しむ家族の中で育ち、ドラム、ベース、キーボードなどにも触れながら、やがてギターへ強く惹かれていきます。
Queen、Led Zeppelin、The Beatles、Van Halenなどのロックに加え、ファンクやポップスからも影響を受けました。
そのため、ヌーノの演奏にはハードロックの歪んだ音だけでなく、細かなカッティング、コーラスを支えるコード、アコースティックギターの繊細な表現も含まれています。
Extremeへの加入とデビュー
1985年にボストンで結成されたExtremeへ加入し、1989年にセルフタイトルのデビューアルバムを発表しました。
初期から、重いリフ、ファンクのリズム、複雑なコーラスワークを組み合わせたスタイルを展開。デビュー作に収録された「Play with Me」では、クラシック曲を引用した高速フレーズと、タイトなバンドアンサンブルを聴かせています。
単なる速弾きギタリストではなく、楽曲の中心になるリフを作り、ヴォーカルとコーラスを支え、必要な場面だけでソロを大きく展開するプレイヤーとして注目されました。
『Pornograffitti』と世界的な成功
1990年に発表された『Extreme II: Pornograffitti』には、「Decadence Dance」「Get the Funk Out」「More Than Words」「Hole Hearted」などが収録されています。
「Get the Funk Out」では、ファンクの細かなリズムとハードロックの音圧を融合。ギターソロは高速なフレーズだけでなく、コード進行に沿って音域と緊張感を変える構成になっています。
一方、「More Than Words」はアコースティックギターと二人の歌を中心にした楽曲です。アメリカのBillboard Hot 100で1位を記録し、Extremeの名前を世界へ広げました。
同じアルバムの中で、激しいロックと静かなバラードを無理なく共存させているところに、ヌーノの作曲家・アレンジャーとしての幅が表れています。
再結成、Rihannaとの活動、『Six』
Extremeは1990年代後半に活動を停止し、ヌーノはソロ作品『Schizophonic』を発表。その後もMourning Widows、Population 1、DramaGods、Satellite Partyなど、複数のプロジェクトで活動しました。
2000年代後半にはExtremeが本格的に再始動。バンドでの活動と並行し、Rihannaのツアーギタリストとして大規模なポップコンサートにも参加しています。
2023年には、Extremeとして15年ぶりのスタジオアルバム『Six』を発表しました。
先行曲「Rise」のギターソロは、速いオルタネイトピッキング、アーミング、ワウを使ったフレーズを短い時間にまとめ、改めて大きな注目を集めました。
2025年には、Ozzy OsbourneとBlack Sabbathの最終公演となった「Back to the Beginning」に出演。YUNGBLUDらと演奏した「Changes (Live From Villa Park)」は、2026年のグラミー賞Best Rock Performanceを受賞し、ヌーノにとって初のグラミー受賞となりました。
ヌーノ・ベッテンコートの演奏は何が特徴なのか
ヌーノの演奏は、速さと正確さだけでは説明できません。
ギター一本でリズム、コード、単音フレーズを行き来し、バンド全体のグルーヴを前へ押し出す力があります。
1.16分音符を基準にした鋭いリズム
右手を細かく動かし、16分音符の流れを保ちながら、必要な場所だけコードや単音を鳴らします。
音を出さない空振りや左手のミュートもリズムの一部になっており、歪んだ音でもフレーズの切れ目が明確です。
2.ファンクとハードロックをつなぐリフ
低音弦のパワーコードだけでなく、高音側のコード、オクターブ、単音のアクセントを一つのリフに組み込みます。
重い音を長く伸ばし続けず、短く切る音と休符を入れることで、ハードロックの音圧を保ちながらファンクの跳ねる感覚を作っています。
3.ピッキングとレガートを組み合わせた速いフレーズ
すべての音を同じ方法で弾くのではなく、オルタネイトピッキング、ハンマリング、プリング、スライドを組み合わせます。
右手と左手の役割を場面ごとに変えるため、速いフレーズでも音の表情とリズムが単調になりません。
4.タッピング、弦飛び、広い音域
タッピングやストリングスキッピングを使い、通常のスケール運指では届きにくい広い音程を移動します。
技術を見せるためだけでなく、フレーズの音域を一気に変え、ソロの展開を大きくする手段として使っています。
5.コードの中へメロディーを入れる伴奏
「More Than Words」などのアコースティック演奏では、コードを鳴らし続けるのではなく、低音、和音、短い装飾音を分けて配置します。
ヴォーカルのメロディーに合わせてコードの内声を動かすため、伴奏だけを聴いても一つの流れがあります。
6.楽曲の展開を作るギターソロ
ヌーノのソロは、最初から最後まで同じ密度で速く弾く形ではありません。
短いモチーフから始め、音域、リズム、強弱を変えながら頂点へ向かいます。「Get the Funk Out」や「Rise」では、ソロ自体が曲の中のもう一つの展開として設計されています。
使用ギターと音作り
長年ヌーノを象徴してきたギターが、Washburn N4です。
小ぶりなボディー、リバースヘッド、Floyd Rose、1ヴォリュームと3ウェイスイッチというシンプルな構成を持ち、Stephen’s Extended Cutawayによって高いポジションまでアクセスしやすく設計されています。
余分なコントロールが少ないため、ピッキングの強弱やギター本体のヴォリューム操作が音へ直接表れます。
現在は、自身のブランドNuno Guitarsを展開。代表モデルのDark Horseは、アルダーボディー、バーズアイメイプルネック、エボニー指板、オリジナルFloyd Roseを採用し、ブリッジに専用ハムバッカー、ネックにSeymour Duncan ’59を搭載しています。
Nuno GuitarsではN4の名称を受け継ぐモデルも用意され、長年の基本設計を残しながら新しいラインへ移行しています。
音作りはハイゲインを基本にしつつ、低音を膨らませすぎず、右手の細かなリズムが聞こえる輪郭を保っています。
歪みの量だけで迫力を作るのではなく、弦を短く止める左手のミュートと、強いアクセントを入れる右手によって、乾いた打撃感を加えているのが特徴です。
まず聴きたい代表曲・演奏動画
Get the Funk Out
ファンクのリズムとハードロックの音圧を組み合わせた、Extremeを代表する楽曲です。
ヴァースの細かなカッティング、低音弦のリフ、コード進行に沿って組み立てられたギターソロまで、ヌーノの特徴がまとまっています。
Rise
2023年のアルバム『Six』に収録された楽曲です。
重いメインリフに続き、後半のソロでは速いピッキング、ポジション移動、ワウ、アームを使い、短い時間の中で大きな起伏を作っています。
More Than Words
ヌーノのアコースティックギターと、Gary Cheroneとのヴォーカルを中心にしたバラードです。
コードを弾くだけでなく、低音、装飾音、ミュートによるリズムを組み合わせ、シンプルな編成に動きを作っています。
代表的なアルバム
- 『Extreme』(Extreme/1989年)
- 『Extreme II: Pornograffitti』(Extreme/1990年)
- 『III Sides to Every Story』(Extreme/1992年)
- 『Waiting for the Punchline』(Extreme/1995年)
- 『Schizophonic』(ソロ/1997年)
- 『Mourning Widows』(Mourning Widows/1998年)
- 『Saudades de Rock』(Extreme/2008年)
- 『Take Us Alive』(Extreme/LIVE/2010年)
- 『Six』(Extreme/2023年)
最初の一枚としては、ヌーノのリズム、ソロ、アコースティックのすべてを聴ける『Extreme II: Pornograffitti』がおすすめです。
より大きな構成とアレンジを聴きたい場合は『III Sides to Every Story』、現在の演奏と音作りを知りたい場合は『Six』が分かりやすい作品です。
ギター講師として感じる、ヌーノから学べること
ヌーノの演奏から学べるのは、速弾きより先にリズムを整えることです。
難しいソロを弾けても、メインリフの休符やアクセントが曖昧になると、ヌーノらしい鋭さは出ません。音を鳴らす瞬間だけでなく、左手で音を止める瞬間までテンポの中へ置く必要があります。
また、ソロでは速いフレーズを単独で練習するだけでなく、その前後のゆっくりしたフレーズとつなげることが重要です。
ヌーノの演奏は、テクニックを楽曲の盛り上がりへ変えるには、伴奏、構成、音色まで含めて考える必要があることを教えてくれます。
練習へ取り入れるなら
最初は歪みを少なめにし、16分音符のリズムと休符を明確にする練習がおすすめです。
- 左手で弦をミュートし、16分音符を一定に刻む
- 4拍の中で決めた位置だけ強くアクセントを入れる
- パワーコードを鳴らした直後に左手で音を止める
- 低音弦の単音と高音側のコードを交互に配置する
- 短い速弾きフレーズの前後に休符を置く
- 録音し、音を止める位置と不要な弦の共振を確認する
速いフレーズは、2〜4拍の短い単位に分けます。
弾き始めだけでなく、フレーズの最後が次の拍へ正確に着地しているかを確認すると、曲の中で使える演奏になります。
まとめ
ヌーノ・ベッテンコートは、ハードロックの音圧、ファンクのリズム、ポップスのメロディーを高いレベルで組み合わせるギタリストです。
鋭い16分音符、休符を生かしたリフ、ピッキングとレガートを組み合わせた速いフレーズ、立体的なコードワークによって、ギター一本で楽曲の流れを大きく動かします。
まずは「Decadence Dance」でリズムギターを聴き、「Get the Funk Out」でソロの構成、「More Than Words」でアコースティックと歌の関係に注目してみてください。
主な参考資料
※プロフィールおよびリンクは2026年9月8日時点で確認しています。
DAIJI OMATA

ギタリスト、音楽プロデューサー。
13歳でギターをはじめ、作詞作曲編曲を開始。
以後、バンド活動を経て、ギタリスト、音楽プロデューサー、作編曲家などの現役プロミュージシャンとして活動中。
東京都八王子市みなみ野にて、音楽教室を運営。
めじろ台・相原・片倉・北野・城山・鑓水・高尾・西八王子・橋本・相模原から通いやすい個人レッスンの教室です。


